論文作成法|技術士第二次試験

 筆記試験合格は口頭試験前に、技術的体験論文を作成して提出する必要があります。口頭試験では、提出した論文の内容を試験官に対して口頭で説明し、質疑応答が行われます。

  ちなみに、この技術的体験論文自体は評価対象ではありません。あくまで口頭試験での内容で評価されます。だからといっていい加減な論文を作成して良いというわけではありません。当然のことながら、しっかりした内容でないと口頭試験で玉砕されることになります。逆に人の手を借りて立派過ぎる論文に仕上げてしまっても、口頭試験でボロがでて玉砕されることになります。自分の業績を正直に書きましょう。

 技術的体験論文は口頭試験を左右します。ここでは論文作成のポイントをまとめてみたいと思います。

技術士にふさわしい技術的体験とは

 まず、論文を書く以前に技術士にふさわしい技術的体験があるかどうか、自分の業務経歴を棚卸しする必要があります。技術士にふさわしい技術的体験に基づいて論文を作成しないと、まとめ方がどうのの問題ではなく、題材でNGです。そのような題材では、たとえ立派に装飾できたとしても、技術士にふさわしいと判断されることは難しいでしょう。

 では技術士にふさわしい技術的体験とはどのようなものなのでしょうか?以下にまとめてみました。

技術士にふさわしい技術的体験

  • 自分が主体的に係っている業務である
  • 解決しようとする技術的課題が高度で、マニュアル的に解決できるレベルではない
  • 自分ならではの創意工夫が見られる
  • 勘ではなく、理論的なメカニズムに対する考察ができている
  • 効果が定量化できている
  • 社会や環境へも十分な配慮がされている

 他にもあるかもしれませんが、主にこんなところを満たしていれば、題材としては十分だと思われます。

論文構成は決まっている

 これは出される課題そのものです。以下の構成に沿って論文を作成する必要があります。これに沿って作成すると、必然的にまとまりのある論文に仕上がるようになっています。

技術的体験論文の構成

  1. 業務の概要
  2. あなたの立場と役割
  3. 業務を進める上での課題及び問題点
  4. あなたが行った技術的提案
  5. 技術的成果
  6. 現時点での技術的評価及び今後の展望

論文作成のポイント

経歴表と矛盾しないテーマを選ぶ

 何年も会社で働いているとたくさんのテーマを担当することになりますが、そのすべてを経歴表に記載するのは大変なので、ある程度まとめてしまう場合があると思います。当然のことですが、論文のテーマは経歴表に記載されている内容に関するものを選ぶようすべきです。というより、経歴表を提出する時から、論文はどんなテーマにするか決めておいた方が良いです。

 ちなみに経歴表も評価対象と考えられます。口頭試験では本当に本人の経歴かどうかをチェックすることだけでなく、技術士としてふさわしい経歴かどうかも判断されていると思われます。と考えると、受験申し込み時から試験は始まっていることになります。経歴表も注意して作成するようにしましょう。

要点を絞る

 前述の構成でA4用紙2枚以内、図表を含め3,000字以内で書くのは実は非常に難しいです。業務内容にもよりますが、恐らくかなりの内容を省かないと、収まりきらなくなると思われます。私もこれに非常に苦労しました。

 したがってやったことすべてを書こうとはせず、特に訴えたい内容に焦点を絞って書くことが重要だと考えます。あれもこれも書いてしまうと、規定の枚数に収まりきれない上、まとまりのない論文になってしまいます。自分は技術士にふさわしいんだということがアピールできる内容に焦点を絞るべきです。

テーマに関する技術的課題や問題点に対する分析

 分析の方法や考察の内容に技術士らしさが伺える内容にでなければなりません。主観的ではなく、理論・実験の両面から詳細に分析し、問題点が浮き出てくるようにします。

分析結果から導かれる解決のための方策

 分析の結果、どのような方策によりそれが解決するのかを具体的に記載します。この方策は論理的矛盾や飛躍のない方策でなければなりません。つまり、試行錯誤や、よく解らないがやってみたら解決した的な内容であってはなりません。さらにそこに高度な創意工夫が感じられるように、従来技術との違いなどをアピールしながらまとめます。

 また、技術士としての仕事は単に技術的に高度なだけではいけません。しっかり社会や環境への配慮を忘れてはいけません。この点に少し触れておくことがポイントです。

成果・今後の展望

 打った方策によりどのような成果が得られたのかを定量的に示すことができればベストです。また、技術は常に進歩しています。今回のテーマの内容に関しても、残る技術的課題に対して今後どのように発展していくのか、要はスパイラルアップしている様を示すことが大事です。技術士法にも資質向上の責務として、日々研鑽することが義務付けられています。